
DSMやICDは医学系の文献でみかける用語ですが、どのようなものであるか学ぶ機会はなかなかないと思います。大雑把にいうとどちらも疾病の分類に関係するものなのですが、疾病を診断するうえで世界標準の分類を知ることは有益なので、歯科医師国家試験対策としても医学の基本知識としても知っておきましょう。
| DSM | ICD | |
| 正式名称 | Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders | International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems |
| 日本語名 | 精神疾患の診断・統計マニュアル |
疾病及び関連保健問題の国際統計分類 |
| 作成者 | アメリカ精神医学会(APA) | 世界保健機関(WHO) |
| 用途 | 精神疾患の診断、研究 | 疾病や疾病と関連する諸問題の情報収集、研究、データベース活用 |
ICDは過去の歯科医師国家試験において複数回登場しています(111C23、118D67)。
今回はDSMの概要について深掘りしていきます。
DSMの必要性
DSMは精神疾患に特化した診断基準マニュアルですが、精神疾患は身体疾患と異なり客観的所見が少なく、検査値や画像診断などで診断を確定することが困難です。それゆえに精神疾患は誤診されることが多く、診断の精度は医師の熟練度に依存せざるを得ないところがありました。そこで、統計学的に精神疾患の特徴を整理し診断基準としてまとめあげる試行錯誤が繰り返され、1952年にDSMの第1版(DSM-Ⅰ)が刊行されました。DSMは医学の進歩とともに改訂が繰り返され、現在は第5版であるDSM5もしくはDSM5-TR(2023年に刊行されたDSM5のテキスト改訂版)が用いられています。
DSM5の特徴
大きく分けて3つあります。
精神疾患の特性上、客観的な所見が得られにくいため、観察される症状に着目して精神疾患の病像をとらえる方法をとっています。
統一された診断プロセスで診断が行われるようにつくられています(基本となる症状をチェックする方式)。これによって医師の熟練度に関係なく診断ができるようになりました。
以前のDSMでは5つの軸(カテゴリー)から精神疾患を総合的に診断していましたが、DSM5からは多軸判定システムが廃止され、多元的診断システムが採用されています。
|
多軸判定システム |
多元的診断システム |
|
| 特徴 | 疾患の典型症状をあげ、一定以上満たせば診断 | 基盤として多元的なスペクトラムを想定し、%表示で重症度を評価 |
| 利点・欠点 | わかりやすい一方、「病気」と「単なる症状」の区別ができず、重症度も評価不能 | 複雑だが、病気と症状の境界線をなくし、連続した病態として重症度も含めて評価できる |
多元的診断システムのほうが、より患者の実態にそった評価ができることは有益ですが、多元的な診断ができない精神疾患や身体疾患との関連病態、心理社会的問題などもあるため、それらは従来の多軸判定も参考にして判断します。
DSM5で新しくなった内容
DSM5では診断基準や疾患の病態に関する考え方が変わったことによって、病名の表記など多くの変更点があります。歯科医師国家試験に関係ありそうな表記だけ抜粋します。
| 令和9年版出題基準上の表記 | 変更前(DSM5より前) | 変更後(DSM5以降) |
|
知的能力障害 |
精神遅滞(MR) |
知的能力障害(ID)もしくは知的発達症に変更 |
| 自閉スペクトラム症 | 広汎性発達障害 ・自閉性障害 ・レット障害 ・小児期崩壊性障害 ・アスペルガー障害 |
自閉スペクトラム症(ASD)に統合 ※広汎性発達障害は消滅 |
|
注意欠如多動性障害 |
注意欠陥多動性障害 |
注意欠如多動性障害 |
| 統合失調症 | 統合失調症 | 統合失調症スペクトラム ※重症度も評価する ※破瓜型、妄想型、緊張型の下位分類は廃止 |
| うつ病 |
双極性障害 |
双極症及び関連障害群 |
他にも多くの変更がありましたが、歯科医師国家試験では精神医学的な専門性が強い名称が出題される可能性は低いため、過去問に登場したことのある病名を中心に変更点を把握しておく程度でよいと思います。
今回はDSMについて概要を説明しました。次回はICDについて同様に解説していきます!
