第1回では和漢薬の基本と歯科で使用する漢方薬について解説しました。
今回は歯科領域の漢方薬について、症例別に詳しく詳しく解説します。
また、歯科領域以外で使用される漢方薬についても有名なものをみてみましょう!
歯科領域の漢方薬をもう少し詳しく
1. 歯痛・抜歯後の疼痛
立効散の一択で、どんな体質の人にも投与できます。
多くの漢方薬が長期投与を前提とするなか、立効散は即効性があることがウリです。
メインの生薬(君薬)の細辛(さいしん)に鎮痛・解熱作用があります。
なお、漢方薬は複数の生薬を調合したものであり、中心的な役割の生薬とその作用を補助する生薬とがあり、この役割を君臣佐使(くんしんさし)とよびます。
立効散では、中心的役割を担う君薬が細辛、君薬の作用を補助し強める臣薬が升麻、君臣薬の作用を調整する佐薬が竜胆、防風、君臣佐薬を補助する使薬が甘草です。
2. 口腔乾燥症
・虚証(体が弱い人)向き:麦門冬湯、牛車腎気丸、八味地黄丸
・中間証向き:五苓散
・実証(体が強い人)向き:白虎加人参湯
麦門冬湯は保険適用外ですがSjögren症候群の口腔乾燥症への有効性が報告されています。
白虎加人参湯は薬剤性口腔乾燥症などでも活躍します。
五苓散は乾燥症状の改善だけでなく余分な水分を排出する効能もあり、浮腫、二日酔い、頭痛などにも効果が期待できます。
3. 顎関節症
・虚証向き:芍薬甘草湯
・中間証向き:薏苡仁湯、葛根湯
・実証向き:葛根湯
芍薬甘草湯は芍薬と甘草のみからなる漢方薬ですが、立効散と同様に即効性があるのがウリです。
君薬の芍薬には鎮静・鎮痙・筋弛緩作用があります。歯科以外でもこむら返りや筋肉痛など筋肉系の痛みに有効であることから、顎関節症ではとくに筋肉痛を伴うケースに有効です。
葛根湯は一般には風邪に効くといわれていますが、筋肉痛・神経痛全般に効能が期待でき、顎関節症では関節痛を伴うケースに有効です。
4. 不定愁訴系
・虚証向き:加味逍遙散、当帰芍薬散
・中間証向き:抑肝散、半夏瀉心湯、半夏厚朴湯
・実証向き:柴胡加竜骨牡蠣湯
漢方薬はメンタル系の不調に関して得意分野の一つであるため、医科・歯科問わず不定愁訴系への臨床的効果は多数報告されています。
歯科領域以外の漢方薬
東洋医学的療法は、西洋医学でカバーできない治療効果などが注目され、代替医療として行われる機会が増えています。
第3回では服用時の注意点と、副作用(有害作用)について解説します!
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KEYWORD “和漢薬③” 服用時の注意点と副作用(有害作用)