第118回歯科医師国家試験をふりかえり、近年の出題傾向や注目テーマについて解説します。
あわせて第120回から適用となる令和9年版の新出題基準(※)で充実をはかるとされる項目についてもお伝えします!
※「歯科医師国家試験制度改善検討部会報告書について」(厚生労働省 令和7年3月31日)より
臨床での問題解決能力をみる問題が増加!
近年の国試は「過去問類似の問題」が減少傾向にあり、テーマは同じでも問われ方が異なる「過去問応用の問題」が増加しています。国試対策として過去問が有効なことは変わりませんが、単なる暗記ではなく、✕選択肢も含めて解説をていねいに確認して応用力をつけていくことが大事です。
出題傾向としては、写真や検査データを読み取って判断させる問題、処置・治療の目的や選択理由などを問う問題の増加がみられ、臨床での状況判断・問題解決の力をはかる内容となっていることがわかります。臨床における状況判断力を身につけるためには、問題に与えられた情報を偏りなく分析することや処置内容の優先順位を理解できていることが求められます。
118回の問題をみると、117回に続き、各学会の診療ガイドラインを根拠にした出題がみられました。また、歯科診療で遭遇しやすい場面をイメージさせる問題も引き続き出題されています。
こういった傾向への対策については、近年の過去問、また模擬試験などで習熟しておきたいところです。
118回の注目テーマは?
近年、出題が注目されるテーマをご紹介します!
「高齢者歯科」や「全身疾患(内科学)」といったテーマのうち、摂食嚥下障害、認知症患者や要介護者の口腔ケア、リハビリテーション、栄養管理などは出題論点として定着したとみてよいでしょう。
また、117回から最新の診療ガイドラインに準じた問題やポジションペーパーなどを意識した出題が増えていることは注目です。医科的な知識を問う問題、多職種連携を意識した問題も増えており、これまで以上に科目の垣根をこえて視野を広げた学習が求められていることがわかります。
120回から適用の令和9年版出題基準では、以下の項目の充実をはかるとされています。
● 情報倫理及びデータ保護に関する原則に関する内容
● 病院歯科等の役割に関する内容
マイナ保険証やオンライン資格確認、診療録の電子化、臨床現場での情報の電子化により、個人情報を含むデータの扱いについての理解が求められること、また、地域の歯科医療連携、歯科医療提供体制をふまえて役割の理解が求められることが背景とされています。
また、このほか必修で出題される英語問題については、「外国人患者への診察を行う際に必要な基礎的な英語の能力を中心とする」とされています。
現行の令和5年版出題基準で言及された「和漢薬」については、118回で初めて正解選択肢で出題されました。
118回で出題された新ワードについては以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひご確認ください!
▶ 118国試の気になる新ワードをピックアップ!【必修編】
▶ 118国試の気になる新ワードをピックアップ!【基礎系・臨床系科目編】
4回に分けて解説してきた「第118回 国試結果を読み解く!」は、いかがだったでしょうか。
国試の現状を知ることで国試対策のイメージがより明確になり、皆さんが正しく力を尽くせるように応援しています!
イラスト:limop