12誘導心電図について、第1回では基本的な概要を確認し、第2回では例として心筋梗塞の異常発生部位を読み取る練習をしました。
今回は12誘導心電図に関する国家試験の問題を解いてみましょう。
答えを選ぶだけではなく、それぞれの波形が意味することを考えながら解いてみましょう。
110D40
60歳の男性。10年前から高血圧症、狭心症、糖尿病および脂質異常症のため加療中である。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、カルシウム拮抗薬および糖尿病治療薬を服用している。下顎右側第一大臼歯の抜去を行うこととした。処置中、強い胸痛を訴えたので、12誘導心電図を記録した。その時の血圧は152/85mmHgであった。心電図を別に示す。
みられる所見はどれか。1つ選べ。
a ST上昇
b 心室頻拍
c 心房細動
d 洞性頻脈
e 左脚ブロック
解答 A
解説
P波、QRS波、PQ間隔、RR間隔に異常はみられないため、刺激伝導系の疾患は除外されます。
ST部分に注目してみると、V3、V4でST部分が顕著に上昇していることがわかります。
さて、V3、V4での異常はどの部位の梗塞を表しているかわかりますか?
12誘導心電図の胸部の電極は下の図のように配置します。
V3、V4は左室前壁の変化を反映するため、左室前壁の梗塞が考えられます。
115D87
60歳の男性。下顎の痛みを主訴として来院した。エックス線撮影後、説明を行おうとしたところ、胸痛、胃部不快感と下顎左側の痛みを訴えた。その時の血圧は110/85mmHg、SpO2は96%であった。初診時のエックス線画像(A)とその時の12誘導心電図(B)を別に示す。
適切な対応はどれか。1つ選べ。
a 経過観察
b 精密触覚機能検査
c ┌56の歯髄電気診
d 循環器科への救急搬送
e ┌56の口内法エックス線撮影
解答 D
解説
下顎右側の不透過像が原因で来院したと考えられますが、診療中に下顎左側の痛みを訴えています。胸痛や胃部不快感があることから、下顎左側の痛みは関連痛の可能性が高いことがわかります。
12誘導心電図からは、Ⅱ、Ⅲ、aVFでST上昇がみられ、下壁での梗塞が考えられます。しかし、V1、V2、V3ではST低下がみられます。V1、V2、V3でのST低下は心臓の反対側である後壁のST上昇を意味することがあります。以上のことから下後壁梗塞が疑われます。
心筋梗塞は致死的な経過をたどる恐れがあるため、循環器科への救急搬送を行うのが適切です。
12誘導心電図についての理解は深まりましたか?
電極の位置や観察している部位を意識して学習を進めていきましょう。