第1回、第2回と、アクチバトールの誘導面形成について概説しました。
今回は、実際に国家試験の問題を解いてみましょう!
116D89
上顎前突で用いるアクチバトールの模式図を示す。
上顎前歯を舌側傾斜させるために誘導面形成すべき部位はどれか。2つ選べ。
a ア
b イ
c ウ
d エ
e オ
解答 A,E
解説
上顎前歯を舌側傾斜させるためには、上顎唇側誘導線を介して上顎前歯に力を伝える必要があります。誘導線が機能するためには、装置自体が構成咬合位から後方へ動けることと、上顎前歯が舌側傾斜できるスペースが必要です。そのための誘導面は以下のように考えます。
構成咬合位で装着
→下顎は元の位置(後方)に戻ろうとする
→装置が後方へ動けるように上顎近心面(オ)を削合してスペースをつくる
→下顎と装置は一体となって後方へ
→誘導線が上顎前歯の唇側面にぶつかり、舌側方向の力が作用する
→上顎前歯が舌側傾斜できるように上顎前歯の口蓋部(ア)を削合してスペースをつくる
114D31
12歳の男児。前歯で食物が咬みにくいことを主訴として来院した。診断をした結果、ある装置を用いて矯正歯科治療を行うこととした。初診時の口腔内写真と装置装着時の口腔内写真を別に示す。セファロ分析の結果を図に示す。
装置の誘導面の形成部位で適切なのはどれか。4つ選べ。
a 上顎前歯の舌側面相当部
b 上顎臼歯の近心面相当部
c 上顎臼歯の咬合面相当部
d 下顎前歯の舌側面相当部
e 下顎臼歯の咬合面相当部
解答 A,B,C,E
解説
セファロ分析からは下顎劣成長と上顎前歯の唇側傾斜が読み取れます。また、口腔内写真からはオーバーバイトが大きく、過蓋咬合であることがわかります。
アクチバトールを用いて上顎前歯の舌側傾斜と過蓋咬合の改善を行う必要があります。
上顎前歯の舌側傾斜については、前の問題と考え方は同じです。つまり、上顎前歯の舌側面相当部(A)、上顎臼歯の近心面相当部(B)に誘導面を形成します。
過蓋咬合の改善は、上下顎臼歯の咬合面を削合することで改善されます。つまり、上顎臼歯の咬合面相当部(C)、下顎臼歯の咬合面相当部(E)に誘導面を形成します。
誘導面形成について複雑に感じるかもしれませんが、「なにをどう動かすか」を意識してみると理解しやすくなります。確実に得点できるように身につけておきましょう!