第1回は医薬品添付文書の新記載要領についてです!
1.添付文書の記載要領が変わったことを知っていますか?
医薬品添付文書は定められた記載要領に基づいて必要な情報が記載されていますが、時代の変化に伴って記載要領も変化しています。
皆さんは2019年4月から医薬品添付文書が新記載要領になったことを知っていますか?
旧記載要領から新記載要領への移行には時間が必要なことが想定されるため、5年間の経過措置期間が設けられていて、2024年3月末日までは旧記載要領でも通用しますが、すでにほとんどの医薬品添付文書で新記載要領が導入済となっています。
国家試験においては今後、新記載要領に基づいた出題が想定されるため、皆さんは新記載要領の内容で学ぶことをオススメします!
2.旧記載要領と新記載要領の違いは何?
細かいことをあげればきりがありませんが、大まかに以下をおさえておきましょう!
②「慎重投与」の廃止
③「高齢者への投与」「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」「小児等への投与」の廃止
④「特定の背景を有する患者に関する注意」の新設
3.「原則禁忌」と「慎重投与」の廃止
従来の医薬品添付文書には「禁忌」「原則禁忌」「慎重投与」という項目がありました。
一方で新記載要領では「禁忌」のみとなり「原則禁忌」「慎重投与」が廃止されました。
「禁忌」はとにかく絶対投与しちゃダメ!という意味なので、わかりやすいですが、「原則禁忌」と「慎重投与」って何が違うの?という疑問の声が現場ではありました。「禁忌」でないなら投与してもいいのか?という判断も現場ドクターの自己責任であったため、わかりやすくしてほしいという声が多かったようです。
新記載要領でどう変わったのか、以下の表に整理しました。
【表:「禁忌」「原則禁忌」「慎重投与」】
旧記載要領 | 新記載要領 | |
---|---|---|
禁忌 | 記載あり | 記載あり 以前は「原則禁忌」に分類されていた医薬品から格上げされたものが追加されている |
原則禁忌 | 記載あり |
廃止 |
慎重投与 | 記載あり |
廃止 |
従来の添付文書で「原則禁忌」だったものを「禁忌」に格上げする場合は慎重に吟味する必要があるため、厚生労働大臣が薬事食品衛生審議会に諮問し、薬事食品衛生審議会での審議を経て確定します。
本当の意味で絶対投与しちゃダメな薬が「禁忌」に一本化されて、曖昧な項目が廃止されたので、わかりやすくなりましたね!
4.「特定の背景を有する患者に関する注意」の新設
添付文書の新記載要領から新たに設けられた項目です!
大まかにいうと、禁忌以外の注意点は全部ここに集約されています!
従来の「原則禁忌」「慎重投与」や高齢者、妊産婦・授乳婦、小児等への注意に相当する内容はここに記載されていますし、全身疾患などへの注意点も記載されています。
この項目に記載されている患者への投与は「禁忌」ではないけれど、投与する場合はこういうリスクを伴いますよとか、こういう注意が必要ですよということが説明されています。
誤解しないでほしいのは禁忌ではないから「安全」というわけではないということです!!
患者の背景に応じたリスクを理解したうえで使う判断、避ける判断の目安にしてねという意図が込められているといえるでしょう。
添付文書の記載要領の変更について、概要がイメージできたでしょうか?
国家試験の過去問では「原則禁忌」に関するものがありました(98A57、104A101、111B65)。これらは新記載要領だと「特定の背景を有する患者に関する注意」に相当すると考えてOKです!
歯科臨床でよく使う薬については医薬品添付文書をネットで検索して一度は目を通しておくことをオススメします!
次回は「歯科領域で使用頻度の高い薬の医薬品添付文書改訂」について紹介したいと思います!