歯科で局所麻酔薬といえば、真っ先に浮かぶのがリドカイン塩酸塩です。
わが国の歯科局所麻酔薬は20年ほどまったく動きがなかったのですが、2024年9月に新しい局所麻酔薬としてアルチカインが正式に認可され、製造販売されています。
従来の局所麻酔薬にはない特徴もあるので、ぜひ覚えておきましょう!
『NewText』でもすでに加筆してありますが、ここではさらに深堀りしていきます!
1. アルチカインとはどんな薬?
局所麻酔薬の化学構造は3つの部分に分けられますが、中間鎖とよばれる部分がアミド結合(-NH・CO-)であればアミド型、エステル結合(-COO-)であればエステル型です。
アルチカインは中間鎖がアミド結合なのでアミド型局所麻酔薬に分類されます。
図:局所麻酔薬の基本構造
これまでの局所麻酔薬は芳香族部分がベンゼン環でしたが、アルチカインはベンゼン環ではなく、チオフェン環です。チオフェン環は硫黄(S)を含むのが特徴です
図:ベンゼン環とチオフェン環
チオフェン環があることで、アルチカインは他の局所麻酔薬よりも脂溶性が向上しており、細胞膜(神経膜)への浸透性が高くなっています。そのためリドカイン並みか、それ以上の高い麻酔効果と長い持続時間が期待できます。
アルチカインはあくまでも「アミド型」に分類されるものの、構造のなかにエステル結合も含むという特徴があります。
アミド型局所麻酔薬は肝臓ミクロゾーム中のシトクロムP450(CYP)で代謝されると覚えているかと思いますが、アルチカインはエステル結合持ちなので、血漿中の非特異的エステラーゼによって速やかに代謝される性質をもっています。
実際には約90%が非特異的エステラーゼによる代謝、残りは肝臓による代謝という形をとります。
従来のアミド型よりも代謝が速やかなので安全域が広いというのが大きな特徴です。
他のアミド型のように代謝で肝臓をあまり使わないことから、肝機能が低下した患者や高齢者などではとても有益です。
アルチカインはアドレナリン酒石酸水素塩が配合されています。これは1/10万アドレナリンに相当するとされており、十分な血管収縮効果を有します。
歯科治療は観血的処置が多いため、血管収縮薬配合という仕様はとても実用的といえます。
2. 歯科用リドカイン製剤との比較
リドカイン塩酸塩 |
アルチカイン塩酸塩 | ||
商品名 |
キシロカイン® |
オーラ®注 | セプトカイン® |
濃度 | 2%(20mg/mL) | 4%(40mg/mL) | |
カートリッジ | 1.8mL | 1.8mL or 1.0mL | 1.7mL |
血管収縮薬 |
アドレナリン塩酸塩 1/80000アドレナリン |
アドレナリン酒石酸水素塩 1/73000アドレナリン当量 |
アドレナリン酒石酸水素塩 1/100000アドレナリン当量 |
添加物(pH調整、酸化防止) | あり | あり | |
組織浸透性 | 高い | リドカインより高い | |
麻酔効力 | 強い | リドカインと同じ〜若干強い | |
毒性 | 低い | リドカインより低い | |
用途 | 浸潤麻酔、伝達麻酔※ | 浸潤麻酔、伝達麻酔 | 浸潤麻酔、伝達麻酔 |
※リドカイン塩酸塩は高濃度製剤では表面麻酔の用途もあり
以上、アルチカインについて紹介しました。
アルチカインの基本的性質はリドカインと似ているため、リドカイン同様に使い勝手のよい局所麻酔薬であるといえます。独特の性質も有するのでリドカインと使い分けることでさまざまな患者の状態にも対応しやすくなるでしょう。
世界的にみるとリドカインよりもアルチカインが広く使われていることから、日本でも今後はどんどん普及していくと思われます。今のうちに知っておくことをオススメします!